Diary

2007.10.12007/10

木暮です。
宮下という男がいて、アメリカへ行く前日に、「いやー二日酔いの日に半袖で原チャ
リに乗ったら風邪引いちゃいましたよーエヘヘ、ゴホゴホ・・・」などとほざいてい
たんだけど、渡米2日目の夜にザックの家で僕が寝込んでしまったのは、明らかに奴
に風邪をうつされたからだ。そしてそのウィルスは僕からライアン→原→ヒース→
ローリー(ジョーの彼女)へと感染していくことになる。さすが宮下、である。ちなみ
に原は「コーラでうがい」することによって、誰よりも早く風邪を治していた.・・
・。
モックオレンジの全員が暮しているエヴァンズビルという街は、緑とスペースに溢れ
ていて本当にいいところだった。カオティックな東京で暮しているから尚更そう思え
たのかもしれない。晴れた日の静かな朝に、涼しい庭先の椅子に座って前日のパー
ティーの余韻を残した空き缶や、フロントガラスの割れた赤いピックアップトラッ
ク、高くそびえる樹木を眺めつつ一服していると、モックオレンジの曲が持つ大きな
グルーヴと煌びやかななギターラインを目の当たりにした感があった。
アメリカ一発目のライブはナッシュビルという街のバー。興奮と緊張のあまり全く息
の合わない演奏は、十条でやってた頃を思い出させるもので、それはそれで楽しかっ
た。ザックの弟のTJとその友達がコーラルリーフで歓声をあげていて驚いた。対バ
ンはモックとゴスメイクのバンド。
続くセントルイスでは機材トラブルがあって、中断している間に原と荒井が頑張って
しゃべっていた。荒井はいつの間にかわりと英語ができるようになっていて普通に
MCをしており、原は完全な片言で笑いまで取っていた。一緒にやったSO MANY
DYNAMOSっていうバンドがタイトでよかった。
次のライブまで2日間オフがあったので、皆思い思いに過ごす。ヒロシが思いつきで
刺青を入れたいと言い出し、ザックの奥さんのブルックと3人でオススメのタトゥー
ショップへ行く。受付にはあからさまなタトゥーショップの店員が座っていた。推測
するに身長190センチ、体重120キロ、ポマードで髪をきっちり撫で付け、もちろんい
たるところに刺青がある。そんな外見とは裏腹に「Hello!」と言ったそいつの声が
わりと高くて好印象をうける。そして左手の指には、人差し指から順に「H」「A」
「R」「D」と彫ってあった。外見を的確に表したその言葉選びにまた好印象。
PAの太一と川崎はトランスフォーマーのグッズを探しに行ったり、ゲームに勤しん
だりしていたらしい。ヒースに日本語でNERDはなんて言うの?と聞かれたので、
「オタク」という言葉を教えると、次の日から太一が車内でDSをやっているのを見
るたびに、「おたぁくぅ!」と叫んで喜んでいた。
シカゴは大都市で、綺麗な表通りと汚れた裏通りが同居しており、車も多く渋滞もあ
る。ライブハウスも今回のツアーで一番日本のそれに近く、スタッフもきっちり仕事
をしていた。モックのファンベースもあるようで、ダブルアンコールがかかったりし
ていた。この日一番驚いたのは、日本から僕たちの演奏を見に来てくれたサカイ君が
いたこと。ヒロシは約束通りドリンクをおごってやったらしい。多謝!
シカゴの夜を、チャドっていうモックの友達の家で過ごしたんだけど、とてもゴー
ジャスなコンドミニアムにびびる。天井から水平に下がっている真四角のシャワーに
はもっと驚いたけど。あれでは熱すぎる湯が出ても避けることができないじゃないか
・・・と思っていたら、水温調節を間違えて熱湯の洗礼を受けた荒井は、あの巨体を
シャワールームの壁際にピッタリと寄せて、レベル8忍者のように熱湯を避けたらし
い。さすが、である。チャドは言葉尻で必ず「ハハハ」と笑いを入れてくるいい奴
だった。
エヴァンズビル2DAYSの初日はできたばかりの、500人くらい入りそうなでかい
ライブハウス。ホームタウンでのライブで、モックも自信満々でこの場所を押さえた
らしいんだけど、何かのフェスティバルとちょうど日程がかぶってしまったらしくフ
ロアに3分の1くらいの客入りだった。ギターのジョーがすまなそうに「こんなはず
じゃなかったんだけど」と言ってきて、だけど僕は彼らのこういうところがとても好
きだ。新しいライブハウスなのにスピーカーは壊れていて、サブベースとハイの足り
ない音環境は良いとは言えなかったけど、僕にとってはグッと来るライブだった。
この日は、アメリカ滞在中に一番言葉を交わす機会のあったザックの友達、マットの
家に泊めてもらう。建設会社の社長である彼の家は板橋区民センターの4倍くらいの
広さで・・・と言っても伝わりづらいと思うが、まあとにかく日本では滅多に見れな
い大豪邸だった。ビールや食事、甘すぎて笑ってしまった葡萄などをご馳走になり、
客室のエクストラダブルベッドに一人で贅沢に眠った。
次の日、今回最後のライブの前にザックの実家でバーベキュー。原をひと回り小さく
して、白髪のアメリカ人面にしたようなザックの親父に会う。会った段階で酔ってお
り、半分くらいしか何を言っているのかわからなかったけど、いいオヤジだった。
「俺をアメリカにいる二人目の父親だと思っていつでも遊びに来い!」という話を何
回もくりかえしてきたり、自分で言った冗談に自分が一番ウケている所など、酔っ払
いの所業は万国共通である。
そんなザックのオヤジや、ジョーの母ちゃん、他のメンバーの両親、親戚、恋人、友達
等が、小さな地元のバーに集まったこの日のライブが悪いはずなんてない。
そして、そんな最高のライブを終えた4時間後、信じられないことに我々は飛行機に
乗って日本へと帰国の途についていたのである!