Diary

2016.4.30日記

4月某日
コークヘッドヒップスターズの企画でDJ。90sライクな、どことなくルードな雰囲気の客層で、明るい酔っ払いも多く楽しい。遊びに来ていたTT BOYが「いやーやっぱりミュージック・ラヴァーなんだね」と体を揺らすダイ君の選曲をしばらく楽しんでから、ザキとハジメちゃんが演奏する最後のHUSKING BEEを観る。ラウンジに戻るとコバさんがいて、腕の刺青増えましたね、と言ったら「俺ももう年だからねー」と含蓄のある返答。ライブとDJの時間が重なっていたのでコークヘッドの演奏は観れず、気付けばダイ君と二人でワインを3本空けていた。打ち上げの飲み屋でガスコンロが炎上したのもびっくりしたけど、この日一番の思い出は、DJ中にSODA!のムラさんに「君はもうパンクスじゃない」といきなり怒られたこと。久しぶりに腹筋が痛くなるくらい笑ってしまって、すいませんムラさん。

4月某日
A Tribe Called Questのファイフが亡くなった。渋谷で観たトライブのドキュメント映画の劇中に体調不良のくだりがあったような気もするけど、よく覚えていない。うちのバンドが最初のツアーからずっと使っている”Smooth Like Butter”は、ATCQのセカンドアルバム収録”Butter”のファイフのラインから拝借している。ルックスもフローもスムースなQティップに対して、どこかいなたいファイフのラップは、その好対照も相まって、とても人懐こく聴こえる。今はもうこの世にいない彼のその声を、僕は聴きたいときにいつでも聴ける。
ATCQも一役買っていた90年代のHIPHOPの熱は、ニューヨークから渋谷を経由して全国へ拡散していった。約20年の紆余曲折を経て、日本のラップ・シーンがまた新たな盛り上がりを見せている。いちファンとして、とても嬉しい。

4月某日
渋谷から練馬に帰る場合、井の頭通りから環七に出るのが一番早いのだが、夜から朝に変わる時間帯の景色でも閲しましょう、と妙な気が起こってしまい青山方面へ遠回りする。昼間の喧騒が嘘のような表参道。薄闇の中、ライトアップされたままのショーウィンドウが逆説的に強調する無人感を数えながら、たまにすれ違うのは千鳥足のねーちゃん、もしくはコツコツとしっかりした足音を立てて歩くお姉さん。信号待ちのタクシーの表示は「空車」。竹下通りもスイスイ走れる。途中のコンビニで”津南の天然水”を買い、レジの兄ちゃんに「どうも」と言ったら、「アイガトゥザイマシタ」と微笑まれた。水を飲みながら携帯をチェックすると、アメリカやインドネシアの友達から「地震は大丈夫?」という内容のメールが来ていた。
現れては消えていく支離滅裂な思考を横目にしゃかしゃかとペダルを漕ぎ続け、環七に出る頃には車も増えて来る。追い越していくトラックのスピードは昼間の2割増だし、野方辺りの側溝には、雑な補修工事による予期しない凹凸があるので注意深く走る。「実家が崩れちゃって、今は従兄弟の家にいるんだけど、目の前の道路とかバキバキになっちゃってて、でもみんな元気だよ、大丈夫」最近、地元に戻った熊本の友達が電話でそう話していたのを、なんとなく思い出した。それ大丈夫じゃねーだろ、と返すと友達は少し笑って言った。「わざわざ電話くれてありがとう」
HKWDIに着くと、初春の空はすっかり明るくなっている。駅前のマクドナルドで朝マック、ホットケーキかフィレオフィッシュか…とか考えてる僕はなんて幸せなんだろうと思う。

4月某日
歓声の上がり方からして他とは少し違うグッド・イベント、シンクロ二シティーに二度目の出演。入り時間より早めに行って十数年ぶりに観たdownyは、とてもよかった。コンビニの前でregaの竜二とすれ違う。envyの冒頭だけ観て準備のために楽屋に戻ってきたkawasakiが「yamazaki san kakkoyokatta」と復唱していた。終演後の打ち上げもすごく良い雰囲気だったので思わず長居しそうになったが、翌日のMV撮影の入り時間を考え、0時を過ぎる前に帰路へ。
家の前で車を降りると、少しだけ雨が降っていた。