Diary

2008.8.12008/08

木暮です。
午後2時に起きた俺は夏の暑さに対する耐性が高いようだ。夏…?しかしそれはまだまだ本番ではなかった。
ひたちなかのステージは涼しかったのである。GOGO7188を袖から見て、普段はクールなあの子の熱い側面を見る。屋上から酔っ払ってスピットするのにも納得な姿がそこにはあった。楽屋スペースで荒イと飲んでいると、背後に陽炎のようにリッキーボーイが現れ、脳内にあと十秒でが流れる。
その何日か後、名古屋のちょっと気の利いた居酒屋で、俺の目の前にはホリエボーイと日向翁が座っていた。襖一つ隔てた向こうから聴こえる湘南一気コールの喧騒を背に、冷房の効きすぎた店内で俺達は牛筋の煮込みを食い、熱燗を舐めていた。ホリエ君は酒が強いのである。柔和な日向氏と刺青。オツな宴だったが何を話したのかはあまり覚えていない。楽しかったという感覚だけが残る。

クーラーが嫌いなので窓を開けて寝ている。窓は小道に面しているので、殺伐とした東京生活において少し無用心か?と懸念しつつも、ぬるい風が吹き抜けるままに眠りにつく八月。夢の世界と交錯する意識の中で微かに新聞配達のバイクの音を聞いたりする。ある日の午前参時頃、ヘッドフォンで古今亭志ん生を聴いていると、ベランダ側で自転車の止まる音がした。向かいの家の兄ちゃんか、今日は帰りが遅かったようだな・・・と日常的な判断をしたのだが、カチャカチャという音がし続けるので、ガッ!と網戸を開けると、全日本ニート代表みたいな奴が洗濯物干しに手を伸ばしている場面を見たのだった。
瞬間沸騰した俺は、深夜の住宅街の静寂を引き裂く雄叫びを上げてしまった、「殺すぞう」。ノーマイクで、ある意味リアルなデス声を突然浴びせられたニート代表は獲物を諦め、ひらりと忍者のように自転車にまたがり逃走を開始。俺も負けずに忍者のようにベランダの柵を飛び越え、小学生以来となる裸足の全力疾走で追いかける。その間叫ぶこと2回、「殺すぞう」、そして、「殺すぞう」・・・。
深夜の忍者対決に敗れた俺はすごすごと来た道を引き返しつつ、ユニクロのジーンズ(セール価格2000円) をパクったのも奴だな、次に見つけたらどうしてやろう、などと考えていると、夜中に物騒な叫び声を聞いたネイバー達がベランダから様子をうかがっていたり、結構な数の部屋の明かりが付いていたりして、少し申し訳なく思いつつも、不可抗力、実力行使、板垣死すとも自由は死せず、そんな言葉が頭に浮かんだ。
その後、警察に被害届を書いている時にふと考えた。奴が何を盗もうとしていたのか。100円ショップで買えるであろう洗濯物干しである。買えよてめー。

次の日、すっかりやさぐれてしまった俺は中央線のとある駅でジョージと合流。昼から駅前で麦酒をかっくらう。ジョージはクエスト・ラヴのような髪形になっていた。話の流れで、i-PODからラビット・アイランドのデモやJ・DILLAの遺作などを聴くうちに酒は進み、DJ STANLEYにナビゲートされつつ、彼のルーツであるサザン・ロックやパブ・ロックに始まり、XTC、90年代エモなどを聴き完全に酔っ払う。夏の午後の居酒屋のカウンターでヘッドフォンをはめて首を振る阿呆と、それを見守る阿呆を見て、居酒屋の親父は思ったことだろう…「日本の夏、金鳥の夏」。夕景、偶然イースタン・ユースの吉野氏と邂逅しテンションが上がる。そして色々と話すうちにいつの間にか時間が経ってしまい、渋谷に着く頃には荒イの出番は終わってしまっていたのであった。
それから後はよく覚えていないが、翌日の午後1時には港区にいなければいけないはずの俺が、家のベッドで目を覚ましたのは夕方だった。夏だねー。