Diary
2010.11.12010/11
木暮です。
夏の終わり頃から、毎朝9時に起きている。
残り飯にスープや味噌汁をかけまわした簡単な朝食を済ませ、8年前に友人から譲ってもらって以来一度もアップデートしていない、化石のようなOSとDTMを搭載した壊れかけのマシンで、前夜に走り書きしたデモをランダムに再生する。ギターを録る時に使っているTASCAMの4トラックMTRは、10年という月日を経て強烈なテープ・コンプレッサーになった。音質の良し悪しなんて、いつの間にか単なる好悪の問題としか考えなくなった。その好みもまた変わっていく。
食後のコーヒーで一服しつつ、脳の動くに任せて脈絡のないことを考えている。窓から見える向かいの家に黄色いタオルが干してある。カラスが視界を横切って飛んでいった。そうだ、今日はあの曲のドラムとベースでも録るか、とスタジオでの作業に思いが至り、そそくさと家を出る。ちょうど真昼の太陽がぎらりとしている時間帯。そんな風に日々スタジオに通う夏を過ごしていた。
これを書いている今、11月14日晩秋、うっすらと明るい曇りの日。冬の入り口に足がかかっている。仙台、いわきでのライブを終えて、家のリビングでキーボードをかちかちいわせている。アマゾンで買ったCDをまとめて聴いている。iPodが壊れたきり買い直していないので、CDプレイヤーで音楽を聴く。この曲順の意図は?これはアルバムならではの捨て曲?或いは次の曲を引き立たせるための地味な・・・そんなことを考えながら。
日曜日だからか、近所の子供たちが遊ぶ声が聞こえてくる。アスファルトにボールが弾む音。
Sufjan Stevens の illinoise っていうアルバムに、骨のガンで死んでしまった友達のことを淡々と語る歌があって、何度も聴いてしまう。
2ヶ月前は会場で売るための3曲を録っていた。今は作りかけのアルバムの曲を放置しつつ、ツアーをしている。仙台、いわきに来てくれた人、CDを手に取ってくれた人、本当にありがとう。
話は前後するが、京都の龍谷大学の学校祭に呼ばれて演奏した。おや、アンディー・ウォーホルの取り巻きのような人が歩いてくる、と思ったらそれはリディムサウンターのTA‐1だった。KCともども、朝までDJをしていたらしい。ハマちゃんが原に「わかば」を吸わされて咳き込んでいた。
DA君に薦められた少女漫画を読破したせいもあって、学生生活に懐旧の情がわいていたので、色々な場所で学生達と会話をする。ケータリングの女の子に「『君に届け』って面白くない?」と問うと、「面白いですけど・・・でも、やっぱりあれはおとぎ話みたいなもんですよ」という割とドライな返答。「そ、そうだよね」。
夏以来のライブだったが、とても楽しかった。翌日横浜でライブだというリディムの面々と別れ、ホテル近くの焼き鳥屋で、座敷童子とex.ハンドクリームのセールスマンらを交え乾杯。2軒目に向かう酒豪たちと別れて、酔い覚ましに京都の町を歩く。ところどころに散見される古い建物。歴史を感じさせるが、決して古びてはいない。現代的な建物よりも、むしろ清潔で静謐な趣をたたえている。或る一帯の街灯が暖色で統一されていたり、街の風情を持続させていこうという姿勢が様々な場所に感じられる。それでも、「~屋敷跡」という立て札の横に噴水の付いた、豪奢なマンションが建っていたりして、しかしそんなものは東京では普通の話だ。戦災、震災、首都機能移転、持続の美学、正月、餅にバター・・・そんなことを考えながら、小一時間ほど歩いてホテルに戻った。
明日からまたツアーが始まる。今度は15日間くらい出たままの小旅行だが、久しぶりに行く土地が多いので楽しみ。リハで練習中のアルバムの曲も、どこかでやれたらいいなと思っています。