Diary

2012.5.19フランス日記 前半

5月某日

フランス行きの飛行機の中、日本語RAP鑑賞にも飽きてしまったので、タダ酒を舐めながら座席モニターで観れる映画を3本観る。「ミッションインポッシブル4」。暇潰しにはもってこいの娯楽作品。既に内容をほとんど覚えていない。「リアル・スティール」。僕は親子の絆モノに割りと弱いので、わかりやすい展開だなーこのやろう、などと思いながら涙ぐんだりする。「クロニクル」。いじめられっ子+超能力という「キャリー」や「AKIRA」を思い出させる青春映画。日本語の吹き替えがクソ過ぎたので途中で止めて英語で観直した。クライマックスで絶叫する主人公。巻き戻してもう一回観る。赤ワインの酔いも手伝って密かに泣く。今なら人生初となる機上での号泣(声を漏らしながら)を体験できるのでは?と思い、もう一度ラストシーンを観ながら「初音ミクの消失」を聴いてみたが逆に冷静になってしまった・・・。僕がこんなトライアルをしてる間、隣席の皮裂キはぐうと熟睡していた。

5月某日

GUSHのマネージャーが空港まで迎えに来てくれて、タクシーでホテルへ。フリーウェイの側壁は色とりどりのピースで延々埋め尽くされている。部屋に荷物を置いてから早速ホテル周辺を散策。昭和50年代並に路上喫煙者が多い。赤いヘッドフォンを着けたスレンダーな女の子が「ぴしり」と吸いかけの煙草を指で弾き捨てていた。
皆と合流してピザ屋で夕食。「茜に映る背高影法師
楽しい一日の終わり」。しかしパリは21時を過ぎてもまだ明るいのであった。スーパーでスナックを数種買い込む。ひまわりの種スナックの味に驚きながら就寝。

5月某日

スケヂュール組みを間違ってしまい、いきなりのオフ日。集団行動が苦手な僕は覇羅君と2人でローカルなパン屋へ。バゲット・サンドとキッシュ、コーラなどを買い込み、交差点の真ん中にあった小汚い広場のベンチで朝餉を洒落込む。昨夕のピザ屋は日本の宅配ピザの品質の高さを確かめさせてくれるような味わいだったが、パン屋で買った品々は全て美味かった。煙草を2本喫してからホテルに戻り、割と近くて有名な観光スポットがどこなのかを調べる。地下鉄で15分のところにルーブル先輩いるらしいよ、まじ?暇だし行くか、という流れでルーブル美術館へ。モナリザなどを閲す。
入口の広場は各国から訪れているのであろう、様々な人種の観光客で溢れている。その賑わいの中に、どう考えてもおかしいくらい空いている椅子とテーブルの一群。何の考えもなしに2人でそこに座り間抜け面を晒していると、絵に描いたような金髪のタキシードがやってきて「ご注文は?」と聞くので、「カフェラテ」と即答。ルーブルの中庭で、なし崩し的に一杯6ユーロのカフェラテを啜り上げる時差ぼけの生き物2匹。地下鉄に乗り帰宿。
夜になってから、パリの大学で仏文学の研究に勤しんでいる友人夫妻と合流し、原発の話などをしながら鴨を食う。ミッチありがとねー。

5月某日

ライブハウスというよりは文化センターといった趣きの建物(実際そうなんだけど)にて演奏。レジデント・アーティストとして認定されるとセンター内に住みながら芸術活動に励んだりできるらしい。出演者は食事無料というカフェでインゲンを食う。一緒に頼んだモスコミュールは本場の味で、むかし歌舞伎町の妙な居酒屋で飲んだ「河童サワー」という飲み物を髣髴とさせた。
GUSHのライブは暖かくてやっぱり良かった。僕達が半袖で演奏して汗だくになったステージで、前半かたくなに革ジャンを脱がなかったマシューはすごいね。
治安の悪そうな地帯に移動して、レストランで打ち上げ。酔っ払ったジュリ先(ジュリアン先輩)は「これが豚の腸詰めだ。つまり豚の肛門ってことでもあるな!」とか下らないことを言っては自分で爆笑するという完璧なおっさんスタイル。「ちょっと食え。あ、食う前に匂いを嗅げ」と言うので、言うとおりにすると「くさいだろ」と確認してくる。「YES」と答えると「ディーヒッヒッヒッヒ、クソの匂い?そうだろ?ディーヒッヒッヒ」とまた爆笑していた。その姿が面白くて僕と荒イも大いに笑わせていただきました。

5月某日

地元のライブハウスとのトラブルでこの日のライブはキャンセル。GUSHのメンバー宅でホーム・パーティーということになり、パリ市の中心部から少し離れたところに暮らす彼らの家へ地下鉄に乗り押しかける。駅まで迎えに来たヤンの車のサイド・ミラーが壊れてぶら下がっている状態なのを発見し、「ハッハッハ」と喜ぶ皮裂キ。アナログ・テープの録音機やヴィンテージのボードなどが置いてある地下スタジオを閲して階上に戻ると、ワインとスナックが用意してあった。そのスナックは3日前にその砂を噛むような味に驚かされた「ひまわりの種スナック」。むう、とうなりながら赤ワインで流し込んでみると、新たな味わいが・・・そうか、そういうことだったのか、と味に目覚める。
この日の夕食のメニューは生ハムやサラミにサラダ、ゆでたジャガイモ、その上に熱して溶かしたチーズをかけて食うという小粋なもの。それと赤ワイン、ハイネケン。フランスに来て食ったものの中で一番美味かったのである・・・。
日本でもごく稀に酔っ払ってカラオケに行くことはあるが、誰かが弾き始めたピアノやギターに合わせて皆で合唱、というのがGUSHの2次会スタイルらしい。その洒脱さとアルコールに酩酊している僕達にグザヴィエが何か歌えと言うので、カケが「乾杯」を絶唱。言語を超越した彼のキャラクターはフランスでも笑いと拍手を持って受け入れられたのだった。「乾杯」を歌うだけで仏人をあれだけ笑わせられるのは、我がスタッフながら凄い。(つづく)